9月県議会一般質問①「県と市町の広域連携の取組について」

一般質問に登壇させていただきましたので、4項目の質問について1つずつ紹介していきます。

 

1つ目は県と市町と広域連携の取組についてです。

問題意識としては、ヒト、モノ、カネが限られる中で、協力できることは協力していくべきだ、限られた資源を集中的に活用していくべきだということです。

 

【Q】

県と市町との広域連携の取組についてお尋ねいたします。

総務省が発表した今年1月1日時点の本県の人口は129万2956人と、12年連続で減少し、初めて130万人を割り込みました。今後も減少傾向が続き、2050年には約92万6000人となると見込まれています。

国の経済財政諮問会議のもとに設置された国と地方のシステムワーキング・グループが昨年末にまとめた資料では、都道府県と市町村の広域連携について、あくまで市町村の自主性・自立性を尊重するとしつつ「地方公共団体には、持続可能な形で住民生活を支えていくため、それぞれが有する資源を融通し合い、共同で活用していく視点がますます求められることになる」と明記されています。私はここでいう資源というのは、大きく分けて2つあると考えていて、1つは人材、もう1つは公共施設等のいわゆるインフラです。

まず、人材確保・育成の観点から検討します。人口減少の局面に入った2000年代後半以降も、基本的にはそれぞれの自治体の責任において専門人材の確保・育成に取り組み、市町間、あるいは県・市町間による補完や支援によって人材を確保する取り組みはほとんどありませんでした。しかし、加速度的に増す人口減とそれに伴う人手不足により、規模の小さな自治体を中心に専門人材を確保することが難しくなっています。今後その傾向は強まると予想される中、各市町が専門人材を確保・育成する努力を継続することに加え、県がイニシアチブを取り、こうした課題を抱える市町と認識を共有したうえで、連携して専門人材を確保・育成することが求められると考えます。

国においても昨年度から、都道府県等が政令市・中核市・県庁所在地を除く市町村と連携協定を締結し、当該市町村が必要とする専門性を有する人材を確保し派遣する場合の募集経費と人件費について、特別交付税措置を講ずるなど、こうした連携を後押ししています。

例えば、奈良県では、2021年から「奈良県フォレスターアカデミー」を開校し、森林・林業を担う専門人材を養成。卒業した県職員を「奈良県フォレスター」に任命し、同一の市町村に長期間派遣し、県が市町村から受託した事業などに従事しています。ちなみに、開校翌年の2022年度には、定員20人に対し4倍超の83人の応募があったといいます。

こうした不足が見込まれる専門人材は森林・林業、農業、水産、土木、電気など多岐にわたり、いずれも地場産業を支える重要な役割を果たしています。

岩手県では今年度から、県内市町村の保健師と土木職の採用に関し、県が一体的に募集の情報発信や試験会場の運営を担い、共同採用の実施に踏み切りました。

さらには今後、地方自治体においては、デジタル技術の活用により、住民の利便性を向上させるとともに業務の効率化を進めることが求められます。一方、デジタル人材は官民問わず不足している状況であり、小規模な市町を中心に独力で人材を確保していくことが極めて困難な状況にあります。デジタル人材に関しては限られたリソースを効率的に活用するという観点から、民間の力をどう活用するかという取組も必要でしょう。国は今年度中に全都道府県に対して推進体制を構築するよう求めており、デジタル人材も新たに広域連携の対象となる専門人材に包含されると考えます。

次に、公共施設等の集約化・複合化の分野で広域連携のあり方について検討します。

高度経済成長期以降に整備された施設・インフラの老朽化が課題となるなか、各自治体の取組だけでなく、県やほかの自治体と連携して公共施設の集約化・共同利用や長寿命化に取り組むことが効果的であり、時代の要請であると考えます。

水道事業を例にあげます。本県における水道事業の概要をみると、水道普及率は93・9%、管路の老朽化率は26・1%、耐震化率は26・8%、浄水施設の耐震化率は15・6%と、いずれも全国平均と同程度か悪い水準にあります。また、地理的な条件や施設配置状況により、事業者間で水道料金に3倍程度の差があるほか、一部では給水にかかる費用を料金収入で賄えていない事業者もみられます。

こうした現状から、県では、2023年3月に策定された山口県水道ビジョンの広域連携シミュレーション編で、将来にわたり持続可能な水道事業経営を確保するための「選択肢の一つ」として水道事業の広域連携をあげています。

本県の水道事業を取り巻く課題について①人口減による収益の減少②老朽化による更新需要の増加③人材不足――などと指摘。本県の給水人口は今後40年で約34%減少、それに伴って収益も約35%減る一方、老朽化や耐震化などで更新需要が増加するとし、今後40年間について、統合範囲では①全県で統合②東部・中部・西部の3圏域で統合――の2つのパターン、事業範囲では①事務の広域的処理②施設の共同利用③経営統合――の3つのパターンで試算しています。例えば全県で経営統合した場合、約74億円の削減効果が見込まれるとしています。

こうした費用面のメリットに加え、私がもうひとつメリットだと考えるのが、先に課題としてあげた技術職員の相互補完です。統合により、管理体制や人員体制の強化、ノウハウの共有、技術継承が可能になります。

他県でも、本県と同様に人口減少が進むなか、県と市町村間の連携を強化することでサービスを継続すべく努力しているところがあります。

水道事業とはやや異なる下水道事業ではありますが、約5300kmの下水道管が通る秋田県では、県と全25市町村が下水道事業で連携しており、2023年に県と各自治体、公募の民間事業者の出資で株式会社を設立。下水道事業の経営戦略や工事の積算を担う仕組みを整えました。

また、自治体間で下水処理施設の統廃合も進め、人口約30万人の秋田市では今後50年間で少なくとも約120億円の費用削減効果を見込んでいるといいます。

この県内全域における高度な連携は「秋田モデル」と呼ばれ、県と市町村の行政機能の一本化の先進事例として注目されています。

国は「将来にわたり水道サービスを持続可能なものとするためには、人材の確保や施設の効率的運用、経営面でのスケールメリットの創出等を可能とする広域連携の推進が重要で、都道府県に推進の義務がある」としており、まずは県がリーダーシップを発揮し、各市町と合意形成を図りながら広域連携を着実に進めていくべきだと私は考えますし、この取組は待ったなしであると認識しています。

こうした公共施設の集約化・複合化は施設の廃止等に踏み込む場合もあり、地域を超えて取り組む場合の利害調整には困難さを伴います。そこで、県には県と市町間の集約化や共同利用の検討だけでなく、市町間での連携が進むよう、調整や事務局機能といった役割を担うことを期待します。

そこで、お尋ねいたします。人口減少が急速に進行し、様々な行政サービスの展開において今後、具体的な支障が生じる可能性が高まっているなか、県と市町の広域連携についてどのように取り組まれていこうとされるのか、御所見をお伺いいたします。

 

【A】

我が国全体が人口減少局面にある中、高度経済成長期に整備した公共施設等の老朽化の進行や、デジタル化、脱炭素化等の社会変革への対応など、行政を取り巻く環境は大きく変化しています。

こうした状況においても、行政サービスを持続的・安定的に提供していくためには、各自治体がそれぞれの強みを活かしたサービスを提供するとともに、互いの資源を融通し合うなど、地域の枠を超えた連携が重要です。

本県においては、連携中枢都市圏を形成する複数市町による交流人口の拡大や圏域経済の活性化の取組のほか、消防やごみ処理業務の広域化など、地域の将来ビジョンや危機感を共有する自治体同士による、自主的・主体的な連携が広がっています。

こうした中、県内市町に共通する課題として、自治体における専門人材の確保や、老朽化が進む公共施設等への対応が求められており、安定した行政運営を進めるためには、これまで以上に、県と市町が連携した取組が必要です。

このため、人材については、本年3月に策定した人材育成・確保基本方針の下、大規模災害時等における市町への派遣を見据えた、土木や林業等の技術職員の採用や共同研修の実施、県と市町間の職員派遣などに取り組んでいます。

とりわけ、都市部への人材の集中が著しいデジタル分野においては、今年度、専門的知見を有する人材を県で確保し、希望する市町に派遣することで、住民の利便性向上と職員の業務効率化を実現するフロントヤード改革等につなげるなど、市町のニーズを踏まえた支援に取り組んでいます。

また、公共施設等については、市町が策定する総合管理計画に基づく管理を基本としつつ、お示しの水道事業に関しては、広域連携による基盤強化が必要であるとの考えの下、県と水道事業者で構成する協議会において、持続可能な水道事業経営の実現に向けた具体的な議論を進めています。

先行して広域連携の検討を行ってきた地域において経営統合が実現した事例もあり、県としては引き続き、経営の安定化や施設・設備の合理化等に向けて必要な支援を行っていきます。

今後は、こうした連携事例を広げていくため、市町との連携会議の場も活用しながら、先進事例や国等の支援策の情報提供、適切な助言など、きめ細かな支援に努めていきます。

私は、今後とも、市町の自主性や自立性を尊重しながら、県が広域自治体としての役割をしっかりと発揮し、広域連携の推進に向けて、積極的に取り組んでまいります。