県議会一般質問③「ワットビット連携構想による企業誘致について」

【Q】

ワットビット連携とは、電力系統と通信基盤を一体的に整備することを言います。政府は、2050年のカーボンニュートラルと今後グリーントランスフォーメーションを同時に目指す上で重要施策と位置づけて検討を進める方針で、具体的には、脱炭素電源とデータセンターや半導体工場、蓄電池などの距離が離れていると、送電網を整備するのに費用と時間がかかります。そこで、光ファイバーケーブルが送電線に比べ費用が大きく抑えられる点に着目し、データセンターなどを脱炭素電源の近くに設置し、光ファイバーケーブルをのばして、情報を伝送するというものです。これまで、災害リスク分散の観点などから、データセンターの地方誘致というトピックは注目をされており、政府もデジタル化社会のさらなる進展を見据え、地方での拠点整備を推進しています。私は本県には今後、一般的なデータセンターはもちろん、ユーザーの近くの設置し、既存のインフラを補完し幅広い分野での活用が期待されるエッジデータセンター、環境への負荷を最小限に抑えたグリーンデータセンターの誘致にも取り組んでいただきたいと思いますが、今後は一歩進んで、データセンターと脱炭素電源、つまり発電設備をセットで整備する、誘致するということが重要になってくると考えます。

近年は再生可能エネルギーの普及・拡大により需要と供給のギャップが生じており、例えば季節では夏と冬、時間では夜間、電力貯蔵だけでは需給運用に限界が生じています。また、全国での今後10年の電力需要見通しがはじめて増加に転じており、電源の追加確保が求められています。

さらに、この構想は本県産業との親和性も高いと考えます。脱炭素電源の近くに需要を誘致すれば、水素を得やすくなり、水電解装置でつくった水素を生産、また運びやすくなります。ガスタービンなどを水素で発電できるようにもなります。また、熊本県のTSMCに代表されるような半導体関連産業は大量の電力を必要とします。本県では周南市に2028年度、日本ゼオンが約700億円を投資し半導体容器などに使われる高機能樹脂の新工場を建設する予定となっていますが、今後さらに本県が半導体関連産業の誘致を目指す上でも、この構想の潮流に乗ることは戦略的にも重要であると考えます。もちろん、行政だけで進められる話ではなく、官民の連携が重要になりますが、エネルギーの将来戦略が国力を左右する時代にあって、民間の投資もさらに増えていくと予想されます。大規模災害が比較的少なく、土地の余剰もある本県の強みも生かし、産業誘致を進めると同時に、ワットビット連携を産業戦略に早期に盛り込み、新たな時代の産業誘致を強力に推進していただきたいと思います。

そこで、お尋ねします。ワットビット連携について県としてどのような情報収集や研究をされているかといった基本的な考え方について、併せてワットビット連携を念頭に置いた産業戦略の策定の必要性について、どのように捉えられているか、ご所見をお伺いいたします。

 

【A】

県では、脱炭素化の流れが国内外で加速する中、カーボンニュートラルへの対応は産業分野においても喫緊の課題であることから、産業分野の脱炭素化の取組を促進するための総合戦略として、「やまぐち産業脱炭素化戦略」を策定し、その実現に向けた取組を積極的に推進しています。

また、国においては、令和5年2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」に基づいて展開してきた様々な施策を産業構造、産業立地、エネルギー等の観点から集中的に議論し、新たに「GX2040ビジョン」を策定するとされ、現在、その検討が進められています。

とりわけ、産業立地では、脱炭素電源の近隣への産業集積の加速、ワットビット連携による全国を俯瞰した電力や通信網の整備に向け、広域単位の産業立地施策等を官民連携で検討するとされており、その動向を注視しているところです。

こうした中、本県においても、新たに立地を検討する企業や県内企業から、脱炭素電源の確保を設備投資の条件として提示される場合もあることから、今後、クリーンエネルギーの確保が企業誘致の重要な要素になると考えています。

また、全国でも先駆的な取組であるアンモニアサプライチェーン構築を目指す周南コンビナートをはじめ、県内企業においても脱炭素化を成長の機会と捉え、新たな設備投資や再生可能エネルギー活用等の動きが活発化しています。

このため、脱炭素化に積極的に取り組む企業に対し、県企業局の水力発電や電力会社等が提供する再生可能エネルギーの電力プランを紹介するとともに、国の支援制度を活用した設備投資の促進や県の補助制度による研究開発・事業化の支援等を行っています。

加えて、本県は地震や台風等の自然災害が少なく、BCPの観点から、ワットビット連携の進展が企業誘致にとって後押しになると考えており、その優位性を活かした誘致活動を積極的に展開していきます。

県としては、市町や関係機関と連携し、国の産業立地施策の検討状況や企業の投資動向を踏まえながら、戦略的な誘致施策を強力に推進し、一社でも多くの優良企業の誘致に向けて取り組んでまいります。