県議会一般質問①「郷土愛を育む教育について」
本日から6日に行った一般質問について、1回につき1問、ご紹介していきたいと思います。
まずは、最初の質問の「郷土愛を育む教育について」です。
自分自身の経験をもとに、郷土愛を育む教育を通じ、将来的に地元に定着させるに至るよう提言をしました。
【質問】
「今日よりぞ幼心を打ち捨てて人となりにし道を踏めかし」
これは、私の母校で、全国屈指の規模を誇った江戸時代の藩校・明倫館の系譜をひく萩市立明倫小学校の1年生が1学期に、朝の会で朗唱する吉田松陰先生の言葉です。「今までは親にすがり甘えていたが、そのような心を振り切って、独り立ちした人間になるために、力強く歩んでいかなければならない」という意味で、まさに新しいステージで成長を遂げていく小学1年生にふさわしい言葉だと思います。
明倫小学校では6年間の計18学期にわたり毎朝、学期ごとに異なる松陰先生の言葉を朗唱します。学期の最初には先生から言葉の意味や歴史などを教わり、それを踏まえてひとつひとつの言葉の意味を考え、咀嚼しながら朗唱します。学期や学年を経るごとに少しずつ長い言葉を朗唱するようになります。
このほかにも、萩市内の小学校では総合的な学習の時間などに、山口県教育会が編集し1980年に発行された「松陰読本」が教材として採用され、いわば教科書のようになっています。松陰先生の生い立ちから海外への密航の失敗、安政の大獄で処刑されるまでの人生や、松陰先生の思想が弟子たちにどのような影響を与え、その後の日本の針路にどのように関わったかなどが、106ページにわたって記載されています。
こうした、私が小学校の時に経験した学びは、今の自分の人格や考え方を形成するに当たり、大きな影響を与えていると感じています。私自身を松陰先生の人生と比較して論じるのは大変おこがましい話ですが、東京で会社を辞めて山口に帰ろうと決意したのは29歳の時。まさに松陰先生が処刑された年齢と同じです。
さまざまな思いを巡らせ、逡巡したわけですが、「松陰先生が命を賭して国のため、長州のために力を尽くされ、自分と同じ年齢でなくなられたことを思えば、どう転んでも命を取られるわけではないし、ちっぽけな心配だ」と考え、踏み出す勇気がわいてきたのです。そして、幼少時の学びが、山口県で、そして萩市で生まれ育ったことに対する誇りを自分自身の中に、そしていつか故郷のために働きたいという自我を芽生えさせたのだと思っています。
自分自身もかつてそうであったように、山口県に生まれ育った若者が東京に憧れ、都会で暮らしたいと思う気持ちは否定されるものではありません。実際、上京して友人はたくさんできましたし、どこに行っても遊ぶところがあり、便利であるのは確かです。しかしながら、満員電車に揺られ、通勤・通学に1時間かかるのは当たり前。災害のリスクは常につきまとい、物価は高い。隣近所との付き合いは希薄で、どこにいっても人混みで何とも言えないせからしい街。全員とは言わないまでも、一定数、都会での生活に飽きを感じている人がいるはずです。
そういう意味でも、幼少期に歴史上の重要用語の詰め込み学習や単純な論述問題の解法の習得に終始するのではなく、山口県が輩出した歴史上の偉人たちが世界、あるいは日本の中でどう位置づけられるのかといった考察を深めることを通じ、山口県に生まれ育ったことの意味を考えさせるような教育をしっかりと行うこと。このことが、たとえ進学を機に一度は県外へ出たとしても、山口県への愛着を深め、就職、あるいは転職、リタイアという人生の節目にUターン、Iターンを検討する、またそこまでには至らなかったとしても、仕事上で何らかの接点を持つなど、そういった一つの動機付けになると考えます。
そこで、お尋ねします。山口県に生まれ育ったことの意義を考えさせるような、郷土愛を育む教育のあり方について、県教委としてどのように位置づけ、取り組む必要があるとお考えか、ご所見をお伺いいたします。
【教育長の答弁】
郷土愛を育む教育についてのお尋ねにお答えします。
人口減少・少子高齢化のさらなる加速やグローバル化の進展など、社会状況が急速に変化する中、児童生徒が、山口県に生まれ育ったことを誇りに感じ、郷土への愛着を深め、将来、本県のために活躍したいという思いを育んでいくことが重要です。
このため、県教委では、本県が目指す児童生徒像の一つに、「郷土に誇りと愛着をもち、グローバルな視点で社会に参画する人」を掲げており、この方針の下、各学校では、ふるさとの人や自然、伝統、文化等について学習する中で、児童生徒が先人の気高い生き方に触れ、誇りある生き方、夢や希望など喜びのある生き方を見出すなどの教育活動が行われています。
具体的には、小学校の社会科では、本県ゆかりの人物の業績等について、副読本「きょうど山口」等を活用して学習しており、例えば、金子みすゞの作品や生涯について学び、人々の心を魅了し続ける作品の背景にある、身近な自然や人の営みに対する愛情に触れることで、同郷に生まれ育ったことに対する誇りを育んでいます。
また、中学校の総合的な学習の時間では、地域の伝統文化などを題材とした探究的な学習を行っており、例えば、神楽を継承する大人との交流の中で、神楽舞に込められた思いや、伝統を守り抜こうとする真剣な姿に憧れや尊敬の念を抱き、改めて伝統を引き継ぐことの意味や価値、重要性を見出しています。
こうした教育活動を充実させるため、今後は、各学校において、ふるさとの人や自然、伝統、文化等に関する学習活動を教育課程に確実に位置付け、家庭や地域と連携・協働する教育活動を体系的に整理し見える化した「学校・地域連携カリキュラム」の下、小・中学校の9年間を通して、計画的・継続的に展開することとしています。
県教委といたしましては、市町教委や関係機関等と連携し、学校が地域と取り組むふるさと学習を充実させることにより、山口県に生まれ育ったことに対する誇りを育み、ふるさと山口の将来を担う志をもった人材の育成に努めてまいります。
※2年前、レノファ山口の吉岡雅和選手が萩に遊びに来てくれた時の写真です。