2月議会一般質問④地域における「食料安全保障」の考え方について

4点目は地域における食料安全保障の考え方についてです。

今国会で農業の憲法とも言われる「食料・農業・農村基本法」が改正されました。その動きをとらまえての質問です。

知事にご答弁いただきましたが、はっきり言って回答には不満が残ります。これから継続的に問いただしていきます。

 

【Q】

地域における食料安全保障の考え方についてお尋ねいたします。

農林水産省は2月、食料・農業・農村基本法の改正案を示しました。気候変動やウクライナ侵攻といった情勢変化による食糧危機を念頭に置いた「食料安全保障」について「良質な食糧が、合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態」と定義し、平時から取り組む方針を打ち出しました。

具体的には①輸出力の強化による国内生産力の向上②合理的な価格形成などを基本理念に据えています。

合理的な価格形成に関しては、これまで基本的に価格形成は市場にゆだねられていたわけですが、法律の中で「持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにしなければならない」とし、生産・流通・販売といった各段階において適正な価格転嫁の必要性を明記しています。

しかしながら、生産・流通・販売のコストを一貫して指標化することは難しく、長期間のデフレにより、価格を上げるためのノウハウに乏しい生産者もほとんどです。例えば中山間地に住む高齢の農家にとって、これまで100円で売っていた農産物を120円に値上げすることはなかなか難しく、農産物の値上げには消費者の理解を得にくいといった側面もあります。JAのあり方や役割も大きく変容する中、行政として現場の声をよく把握した上で、関係機関と連携して、適正な価格転嫁に最大限の配慮をする必要があると考えます。

また、農村の振興に関しては農業法人の経営基盤の強化、農地の集団化・適正利用、スマート技術を活用した生産性の向上を図ったうえで、「地域社会が維持されるよう、農村の振興が図られなければならない」として、地域社会の維持をうたっています。

私も1~2月に地元・萩市のいくつかの農事組合法人の総会や、それらの集合体によって成る株式会社の株主総会にお招きをいただきましたが、先進的な取り組みを行っているとして注目され、県内外から視察に訪れるようなところであっても、貸借対照表をみると厳しい経営の実態があることを突き付けられました。

農業の法人化が一定程度進んだことによって補助金を得やすくなったり、新しい技術を導入しやすくなったりした面はあると思いますが、まだまだ十分農村部に浸透しているとは言えない状況であり、飼料価格や原油価格の高騰、就農者の高齢化や後継者不足などの課題をあげればきりがありません。

本県は、中山間地域を数多く抱え、一次産業が主要産業の一つでもあることから、生命の根幹をなす「食」分野を行政が下支えし、地域の農業、ひいては県土を維持していくことは重要であると考えます。とかく課題が山積している一次産業においては、目の前の課題に対応することに手いっぱいとなり、明るい未来、将来像を描ききれていないのが現状ではないでしょうか。

そこで、お尋ねします。法改正でうたわれている我が国として目指す食料安全保障、とりわけ農業の在り方を踏まえたうえで、県として、どのような農業の姿を目指されているのか。また、そのために何に力を入れていくのか、その道筋についてのご所見をお伺いいたします。

 

【A】

近年、農業を取り巻く環境は、担い手の減少・高齢化はもとより、国際情勢の緊迫化や気候変動等により、食料需給をめぐるリスクが顕在化するとともに、燃油や資材価格が高騰するなど、一段と厳しさを増しています。

こうした中、国では、食料・農業・農村基本法の改正案が今国会に提出され、この中で、食料安全保障の観点から、自給率の低い作物の国内生産の拡大や、輸出を通じた需要開拓、合理的な農産物価格の形成等についての議論が進められているところです。

私は、こうした環境の変化を踏まえ、将来にわたって、県民の皆様に安心・安全な食料を安定的に供給することが極めて重要と考えており、このため、今後、生産性と持続性を両立した力強い本県農業の実現に積極的に取り組むこととしています。

具体的には、まず、食料生産を支える農地の維持・確保を図るため、農地の大区画化・汎用化に資する基盤整備を積極的に進め、生産性を高めるとともに、農地中間管理機構等を活用した担い手への農地の集積・集約化を図ってまいります。

次に、中核経営体の育成や経営基盤の強化を図るため、引き続き、意欲ある担い手の法人化や経営規模の拡大等を積極的に支援するとともに、新たに新規就農者等が中古の農業機械や施設を有効活用できる仕組みを構築し、県内外からの就農を促進します。

また、持続可能な生産供給体制を確立するため、水稲の作付面積の拡大に向けて、需要の高い加工用米などの生産に取り組む経営体を支援するとともに、野菜等の生育を促進するための環境制御システムなど、食料増産につながる農業DX技術の導入も促進してまいります。

さらに、県産農産物等のさらなる需要拡大を図るため、大都市圏や海外への売り込みを一層強化するとともに、県内においては、「ぶちうま!アプリ」を活用した販売促進などにより、地産・地消の取組を着実に推進することとしています。

加えて、厳しい経営環境にある農業者の経営継続を図るため、肥料や配合飼料の価格高騰分の一部を支援するとともに、引き続き国に対して、持続的な生産が可能となる合理的な農産物価格の形成に向けた検討が進むよう要望してまいります。

私は、今後とも、市町や関係団体等と連携し、食料の安全保障につながる生産性と持続性を両立した力強い農業の実現に向けて、積極的に取り組んでまいります。