一般質問詳報⑥部活動の地域移行
最後に質問したのが、部活動の地域移行です。
これまで様々な議員の方々が質問されてきていましたが、自分が体験の中で感じたこと、選手、指導者として思うことを中心に整理して質問をさせていただきました。
実際のところ、部活動の地域移行に関して主体は市町村にうつっていると思います。県としてできることは市町村の相談に乗るとか、結構限定的になってきているのが実情ではありますが、県としてかかわりを持たないわけにはいきません。
認識をしっかり確認しておきたいという意味で、質問に立ちました。
【質問全文】
部活動の地域移行についてお尋ねをいたします。
部活動の地域移行はご案内の通り、中学校や高校の教員が学校教育の一環として担っていた部活動の指導を地域のスポーツクラブや民間事業者に移行し、教員の負担を軽減するとともに、子供たちの運動や文化活動に参加する機会への選択肢を増やす取り組みです。
これまでも一般質問等で議員の皆様よりお尋ねがございましたが、本日は私自身が地域クラブの指導や運営にかかわる中で実感した課題を中心に整理し、質問させていただきます。
私の地元の萩市では、部活動の地域移行に向け、昨年初めから陸上競技の指導実績が豊富な教員や元日本代表選手、箱根駅伝に出場経験のある地元有志らが連携した取り組みを始め、今年度からは青山学院大学陸上競技部の原晋監督のご協力を得て、「絆スポーツクラブ萩」を設立しました。これは青山学院大学陸上部が地方の自治体においてクラブチームを創設した全国初の取り組みであり、読売新聞の全国版でも取り上げていただきました。
また、県からも先進的な取り組みとして「新たな時代の人づくり協働推進事業補助金」をいただいて、まずは市内の中学生、高校生を対象に受け皿を構築し、近い将来ランニング愛好者といった世代をこえた縦の展開、また、ソフトボール、サッカーなどほかの競技に横展開をしていく予定です。
しかしながら、クラブチームとして地域移行を進める中で、地方ならではのさまざまな問題が顕在化しています。
1つは合併前の旧町村を中心に、市中心部から距離のあるところに住む子供たちの移動手段の確保です。車で最大約1時間かかる市中心部に子供たちをどう輸送するのか。保護者が運ぶのか、指導者が運ぶのか、それとも市がバスを用意するのかといった課題があります。
次に、運営資金の確保です。少子化で子供の数という分母が限られており、さらには各家庭においては、これまで部活動ではかからなかった入会金や月謝といった費用が必要になります。
最後に、一部の学校では部活動の地域移行という考え方が十分に浸透しておらず、地域移行に二の足を踏んでいる状況があるということです。具体的には、「生徒をクラブに奪われるのではないか」「他の学校が強くなってしまうのではないか」などの誤った懸念から、生徒がクラブに加入したくてもできない事例がみられます。
その他にも、萩市では、陸上競技では幸いなことに優れた指導者を確保することができましたが、地域や競技によっては指導者を確保することが困難なケースも想定されます。意欲のある指導者がクラブ活動に参加しやすい環境を整備することも肝要です。
現在は部活動の大きな変革期にあって、様々な課題が生じてはいるものの、子供たちの選択肢を増やし、未来への可能性をより広げるためには、部活動の地域移行を進めることは不可欠であると考えます。
また、主要な実施主体となる地域の受け皿の担い手にとって、県や市町など自治体の強力な後押しは心強いサポートとなるのです。
掛け声にいち早く呼応して取り組みを進めたところほど多大な困難が生じるといったことのないよう、また子供たちが不利益を被ることがないよう、県にはリーダーシップを発揮していただくことをお願いいたしまして、お尋ねをいたします。
県は今月5日、中学校の部活動の地域移行に関して2025年度までに可能な市町から休日の部活動から移行を進める最終案を示されました。様々な課題も想定される中、地域の受け皿となる団体等をサポートしていく必要があると考えますが、今後どう取り組まれるのでしょうか。
あわせて、部活動の地域移行を円滑に進めていくためには、学校や保護者の理解を促進し、さらに今後も子供たちを指導したいと考えている教員が、地域移行後も指導者として活動しやすい環境づくりが重要だと考えますが、このことにどう取り組んでいかれるのか、ご所見をお伺いします。
【繁吉教育長答弁】
少子化の中にあっても、将来にわたり、子どもたちがスポーツ・文化芸術活動に継続して親しむことができる機会を確保することをめざし、県教委では、観光スポーツ文化部と連携して、部活動の地域移行に取り組んでおり、このたび、県の取組の方向性を示す県方針の最終案を取りまとめたところです。
今後、地域移行の取組を加速するためには、お示しのように、学校・保護者等への一層の理解促進を図るとともに、希望する教員等が新たな地域クラブ活動で指導できる環境づくりを進めていくことが、重要であると考えています。
このため、県教委では、まず、学校・保護者等への理解促進に向けて、取組の方向性や期待される効果など、県方針の考え方が広く行き渡るよう、リーフレットを作成・配布するとともに、セミナーや会議等のあらゆる機会を通じ、周知・啓発を図ることとしています。
また、今年度新たに、市町が行う保護者等を対象とした説明会への補助制度を創設したところであり、地域で実施されるスポーツ・文化芸術活動の内容や具体的なスケジュールなどの、市町における周知・啓発活動を支援してまいります。
次に、希望する教員等が新たな地域クラブ活動で指導できる環境づくりに向けては、本年3月に、勤務時間外における地域クラブ活動への従事等の取扱いを定め、市町教委にも示したところであり、今後、教員等に対して、説明会の開催などにより、指導者の募集情報の提供や人材バンクへの登録の働きかけを行ってまいります。
県教委といたしましては、観光スポーツ文化部と一体となって、各市町や関係団体等と緊密に連携し、部活動の円滑な地域移行に向けて積極的に取り組んでまいります。
【京牟礼観光スポーツ文化部長答弁】
少子化が進む中、国においては、学校単位での継続が困難となった部活動を地域へ移行する取組が進められており、本県においても、将来にわたり子どもたちがスポーツ・文化芸術活動に継続して親しむことができる機会を確保することが求められています。
このため、これまで各市町の検討協議会の開催への支援や関係者への周知・啓発を図るなど移行に向けた環境整備を行うとともに、県の地域移行に向けた取組の方向性等を示す方針の策定を進めてきたところです。
このたび、各市町や関係団体等の意見を踏まえ、県方針の最終案を取りまとめたところであり、今後はこれに沿って、新たな地域クラブ活動の受け皿となる団体等の整備充実や、指導者の確保、保護者の負担軽減など、課題解決に向けて取り組んでいくこととしています。
まず、受け皿となる団体等の整備充実については、今年度、県内7市において、国事業を活用した実証事業を実施する中で、実施主体等の体制整備や運営の在り方の検証等を進めることとしており、その成果も踏まえ、今後、受け皿となる団体等への支援の在り方を検討してまいります。
次に、指導者の確保については、新たに、指導者の情報を一元管理・提供できる人材バンクを整備し、意欲ある指導者が参加しやすい環境づくりを進めるとともに、関係団体等に幅広く指導者の発掘・登録を働きかけていきます。
さらに、保護者の負担軽減については、生徒の移動手段の確保や各家庭の費用負担の軽減などの市町の取組に対し、国による十分な財政支援が図られるよう要望するとともに、今後、国の支援方策を踏まえて、県としての具体的な対応を検討してまいります。
県としては、県教育委員会と一体となって、各市町や関係団体等と緊密に連携しながら、地域の受け皿となる団体等のサポートをはじめ、部活動の円滑な地域移行に向けて積極的に取り組んでまいります。